練習船 日本丸
航海訓練所の練習船「日本丸」です。1930年建造の初代日本丸の代替船として1984年に建造されました。実習生の体型が昔に比べ大きくなったこと、女子実習生用の衛生設備やエアコンの設置などのため、初代より少し大きくなっています。
初代にもあった船尾の飾りに加え、船首像や船体に引かれたラインなど、練習船らしからぬ装飾が施され、帆装と共にこの船をひときわ目立たせています。
日本丸に乗り込みます。デッキから上に向かって無数のロープが伸びています。
写真左上の黒く塗りつぶされた部分に舷灯があります。舷灯は夜間に船の左右を示す灯火で、色は右が緑、左が赤です。日本丸は帆走用と機走用の2組の舷灯を備えており、これはウイング(ブリッジの両脇に飛び出した部分)の所にある機走用です。
こちらは帆走用の舷灯のカバーです。船首のデッキ上にあります。この写真はデッキ上で撮ったため開口部が見えていません。
ぴかぴかに磨かれた頭部にマストが映っています。
バウスプリットです。これは船首から前方に伸びる支柱で、帆がよじれないように支えるための物です。
帆走用舷灯とバウスプリットの位置関係はこうなっています。
日本丸は4檣バークと呼ばれる形式の帆船です。これは4本のマストを持ち、前3本のマストに横帆、最後尾のマストに縦帆を張る形式です。
写真左が最前部のフォアマスト、右が2本目のメインマストです。最も高いメインマストは海面からの高さが50m近くあり、レインボーブリッジをくぐれるぎりぎりの高さです。
3本目と4本目にはそれぞれミズンマスト、ジガーマストという名称があります。
前から見たブリッジです。船体の前から4分の1程の所、メインマストの前にあります。機走時はここで操船を行います。
帆走時は帆の状態が把握しやすい船尾で操船を行います。船体の一番後ろに帆走時に使う大きな操舵輪があります。通常は2人で回しますが、荒天時に4~6人で回しやすいよう輪が2つ付いています。
帆船に似つかわしい木製の操舵輪ですが、油圧による補助で軽く回せるようになっています。油圧系統の故障時はギアに切り替えられるようになっています。
前方の見張りとのやりとりはデッキ上に立つ伝令を介して行うそうです。
操舵輪の中央には船名が刻まれています。
舵角を示すメーターです。後ろを向いて見る位置に取り付けられているため、文字盤の左が右舷になっています。
もちろんコンパスもここにあります。
ロープを使ったウェルカムボードです。
ブリッジの下の入口から船内へ入ります。混んでいて撮影できませんでしたが、下のデッキへ降りる階段の手すりは木製でした。
食堂です。ここも壁面や本棚が木製です。日本丸の食堂は教室でもあり図書館でもあります。一般公開中も食堂の片隅で授業が行われていたため、人がいない3分の1程の空間を撮影しました。
食堂の後方には士官の居室が並んでいます。実習生の居室はもう1つ下のデッキにあるそうです。
鉄製の水密扉の内側に木製の扉があります。このように、日本丸の船内には木製の古風な造りの部分がたくさんあります。
再び船楼甲板(船体上部の広いデッキ)へ出ます。
無線室です。最新の機材と共にモールス符号を送信するための電鍵もあります。
日本丸のコールサインはJFMCです。
ファンネルです。船体のほぼ中央にあります。初代日本丸のファンネルは一目でそれとわかる形でオレンジ色に塗られていましたが、現在の日本丸の物は他の構造物と同化して目立ちません。
日本丸は新旧の技術が共存する大変興味深い船でした。
日本丸 主要諸元
総トン数 2,570トン
長さ・幅・深さ 110.09m・13.80m・10.72m
機関 ディーゼル 1103kw×2
航海速力 13.2ノット
定員 190名(うち実習生120名)
建造 住友重機浦賀(1984年)
(この写真のみ横浜港で撮影)