晴海埠頭客船ターミナル

 2007年5月19日・20日、第60回東京みなと祭が開催されました。毎回珍しい船の一般公開が行われる晴海会場では、今年は浚渫船「雲取」、練習船「海鷹丸」と「日本丸」、消防艇「みやこどり」の4隻が公開されました。

 ここでは雲取、海鷹丸、日本丸の3隻を紹介します。残念ながらみやこどりは見学希望者多数のため早々に受け付けを終了してしまい、私は見学できませんでした。

 
前方から見た浚渫船「雲取」

浚渫船 雲取

 東京港周辺は川から流れ込む土砂が堆積してどんどん水深が浅くなり、大型船の通航に支障を来すようになります。そのため、定期的に浚渫を行って必要な水深を確保する必要があります。
 この「雲取」は東京港の浚渫を行う船で、東京都が所有しています。

 
雲取のブリッジを見上げる

 雲取という名前は東京都の最高峰である雲取山(標高2017m)に由来します。
 この日は水産庁のバースで展示された雲取。実に物々しい外観です。

 
縦に長い五角形のファンネル

 ファンネル(煙突カバー)には東京都の紋章。都バスや都営地下鉄に付いている「T」の字を図案化したシンボルマークではなく、旧東京市のものを引き継いだ戦前からの紋章です。

 
ファンネルを上から見る

 ファンネルを上から覗き込んだところ。キセル型3本、H型1本の排気口があります。ひょっとして奥の方にある四角いのも排気口でしょうか。

 
たくさんのスイッチとメーターが並ぶ操作盤の前に監視モニターが7台

 ブリッジ内にある制御盤です。前方には各部の様子を監視するモニターが並んでいます。この船は自力航行できないので、操舵輪やエンジンテレグラフはありません。
 なお、便宜上「浚渫」と呼んでいますが、雲取は法的には船舶ではなく、工場などと同じ扱いなのだそうです。そのため管轄する省庁も国土交通省ではなく経済産業省だそうです。

 
エスカレーターのように並ぶバケットを見下ろす

 ブリッジの前にあるベランダのような場所から前方を見下ろすと、海中から続くバケットの列が見えます。これをエスカレーターのように動かして海底の土砂をすくい上げます。
 バケット式と呼ばれる方式で、この方式の浚渫船は日本ではこの雲取だけです。

 
横に伸びるベルトコンベアの下に土砂運搬船

 すくい上げた土砂は左右にあるベルトコンベアで土砂運搬船に積み込みます。コンベアの下に見えている黒い斜面の部分が土砂運搬船「しゅんかい2号」です。土砂を積んで所定の投棄水域まで行くと、船底の部分を開いて土砂を捨てます。鉄道の貨車に「ホッパ車」と呼ばれる車種がありますが、それと同じやり方です。

 
ブリッジを右前方から見る

 ベルトコンベアは使用しない時はこのように引き上げておきます。ブリッジの前から右下へ続く滑り台のような構造物の中に先程のバケットが並んでいます。

 地味な仕事をする船ですが、今日は満船飾です。

 
2台の操作盤の間に1脚の椅子

 ベルトコンベアの操作席はブリッジの左右に1つずつあります。

 浚渫作業時、雲取には13人の乗組員が乗り込みます。自力航行できない雲取は作業期間中ずっと作業水域に置いたままになるので、作業のない夜間や休日も3人が宿直として残るそうです。

 
ノートパソコンを置くための台

 これはパソコンを置く台です。スポンジの板をばねで吊ってあります。作業中の激しい振動からパソコンを守ります。

 
真後ろから見た雲取

 後方から見た雲取です。船尾に2本の杭があります。作業中は流されないようにこの杭を海底に打ち込んでおきます。
 また、杭はそれぞれ前後に6m移動できます。一方の杭を打ち込んで6mずらし、もう一方の杭に打ち替えてまた6mずらすという動作を繰り返すと、6mの歩幅で歩くように移動できます。

 
雲取の後方に金剛丸

 この写真左に写っている船は押船「金剛丸」です。動力を持たない浚渫船「雲取」や土砂運搬船「しゅんかい1号・2号」を押して移動させます。構造的には普通のタグボートのようです。
 実際の作業では、このほかに調査船や多目的支援船、警戒船も加わり、「雲取船団」を形成します。

 
雲取のブリッジ・ファンネル・船名

雲取 主要諸元

長さ58.0m 深さ4.5m 排水トン数2,220トン
浚渫能力 毎時800立方メートル
浚渫深度 7.0m~18.5m
浚渫土厚 約1.0m
浚渫幅 60m(船体をスウィングして施工)
バケット 0.5立方メートル×75個
建造 石川島播磨重工業(1986年)

 

練習船「海鷹丸」へ進む

船 目次へ

トップページへ