2009年3月14日のダイヤ改正で、東京-大分間の「富士」と東京-熊本間の「はやぶさ」が廃止されました。これで最盛期には6往復が定期運行されていた東京と九州を結ぶブルートレインが全てなくなりました。

回想編

 まずは、東京-九州間ブルートレインの5つの列車名が全て残っていた頃を振り返りたいと思います。この区間のブルートレインは1958年から1964年までに5つの列車名が揃いました。以後運転区間や使用車両の変更を繰り返しながらも5つの列車全てが運転されていましたが、1994年12月のダイヤ改正から列車そのものの削減が始まりました。
 ここでは1993年3月ダイヤ改正時点における下り列車の東京駅出発時刻順に紹介します。

田町付近を走るさくら

田町付近を走るさくら 1988年撮影

16:37 さくら
長崎・佐世保行き

 「さくら」は後述の「富士」とともに1929年に登場した日本最古の列車名です。1923年から運転されていた東京-下関間の特急に命名され、1942年まで使われました。
 写真のヘッドマークは戦前の列車最後部に取り付けられていたマークのデザインを復活させたもので、1985年から使用されました。

 
横浜駅を発車するさくら

横浜駅を発車するさくら 1991年撮影

 1984年から4人用個室B寝台「カルテット」を連結してブルートレインのグレードアップの先陣を切りましたが、1999年には佐世保行きをやめて「はやぶさ」と併結運転となり、2005年3月のダイヤ改正で廃止されました。

 2011年には新幹線の新大阪-鹿児島中央間の列車で「さくら」の列車名が復活する予定です。

 
東京駅に入る富士

東京駅に入る富士 画面右下に0kmの距離標 1988年撮影

17:05 富士
南宮崎行き

 「さくら」と共に日本最古の列車名です。写真のヘッドマークもやはり1985年から使われた戦前のテールマークの復刻版です。寝台特急としての富士は1964年運転開始で、東京-九州間では唯一最初からブルートレインだった列車です。また、この列車だけ蒸気機関車で運転されたことがありません。

 
東京駅で発車を待つ富士

東京駅で発車を待つ富士 2008年撮影

 1965年から1980年までは大分・宮崎経由で東京-西鹿児島(現・鹿児島中央)間の運転で、1574.2kmを24時間かけて走っていました。これは定期運行されるブルートレインの最長記録で、今後も破られることはないでしょう。
 1986年からロビーカーを、1989年から1人用個室B寝台「ソロ」を連結。1997年には運転区間が東京-大分間に短縮され、2005年から「はやぶさ」と併結運転となり、東京駅最後のブルートレインになりました。

 
東京駅に到着したみずほ

東京駅に到着したみずほ 1994年撮影

18:00 みずほ
熊本・長崎行き

 「みずほ」は常に他の列車を補完する立場でした。1960年代には同じ形式の客車でもやや見劣りする初期形をなるべくこの列車に回していたとか。それでも1972年には「富士」や「はやぶさ」より先に新型車に置き換えられ、1984年から「さくら」とともにカルテットが連結されました。

 
鳥栖駅に着いたみずほ

鳥栖駅に着いたみずほ これから機関車を切り離す 1994年撮影

 しかし食堂車は他の列車より2年早く1991年に営業を終了し、1994年には東京-九州間のブルートレインで最初に廃止されてしまいました。

 写真は鳥栖駅に到着した熊本発の「みずほ」です。これから機関車を切り離し、長崎発の「みずほ」を前に連結して東京へ向かいます。

 
品川運転所から東京駅へ回送されるはやぶさの編成

品川運転所から東京駅へ回送されるはやぶさの編成 1988年撮影

18:16 はやぶさ
西鹿児島行き

 1960年からブルートレインになった「はやぶさ」は、東京-西鹿児島間を鳥栖・熊本経由で走っていました。
 1985年からはロビーカーが連結されるようになりました。これはブルートレインで初めての本格的なフリースペースで、以後多くの列車に連結されました。

 
東京駅で発車を待つはやぶさ

東京駅で発車を待つはやぶさ 1994年撮影

 1989年からはソロも連結されました。しかし1997年には運転区間を東京-熊本間に短縮、1999年には「さくら」と併結運転になり、次第に衰退していきました。2005年の「さくら」廃止後は「富士」との併結運転になり、ロビーカーが廃止されましたが、最後の東京駅発着ブルートレインとして2009年まで運転されました。

 
あさかぜのマークを付けて東京駅で待機するEF66

あさかぜのマークを付けて東京駅で待機するEF66
1994年撮影

19:00 あさかぜ1号
博多行き

 1956年に東京と九州を直結する初めての夜行特急として運転開始。1958年には最初のブルートレインになりました。1968年からは東京-博多間2往復となり、1970年には東京-下関間1往復を加えた3往復体制になりましたが、新幹線が博多に達した1975年には東京-博多間の1往復が廃止されました。
 1978年まではA寝台の連結両数が他の列車より多く、1972年から1976年までは個室寝台車を連結する唯一の列車でした。1986年に編成全体のグレードアップを行い、車体外部の銀色のラインを金色に変更。1987年からは2人用個室B寝台「デュエット」を連結、ブルートレイン初のシャワーも設置されました。

 
博多駅に到着したあさかぜ

博多駅に到着したあさかぜ 1994年撮影

 他の九州発着列車よりやや優遇されていた感のある「あさかぜ」ですが、運転区間が最も短く他の列車でカバーできるためか1994年には東京-博多間の列車が「みずほ」と共に廃止されました。また、残った東京-下関間の列車も2005年に「さくら」と共に廃止されました。

 

 当時は九州方面以外も含めて実に11本もの夜行列車が東京駅に発着していました。

下り 東京発
発車時刻 種別 列車名 行先
16:37 特急 さくら 長崎・佐世保
17:05 特急 富士 南宮崎
18:00 特急 みずほ 熊本・長崎
18:16 特急 はやぶさ 西鹿児島
18:44 特急 出雲1号 浜田
19:00 特急 あさかぜ1号 博多
19:20 特急 あさかぜ3号 下関
21:00 特急 瀬戸 高松
21:20 特急 出雲3号 出雲市
23:00 急行 銀河 大阪
23:40 普通   大垣
上り 東京着
到着時刻 種別 列車名 発駅
4:42 普通   大垣
6:30 特急 出雲2号 出雲市
6:43 急行 銀河 大阪
6:56 特急 出雲4号 浜田
7:12 特急 瀬戸 高松
7:28 特急 あさかぜ2号 下関
9:33 特急 あさかぜ4号 博多
9:58 特急 富士 南宮崎
10:13 特急 はやぶさ 西鹿児島
11:03 特急 みずほ 熊本・長崎
11:29 特急 さくら 長崎・佐世保
 

 それでは、東京と九州を結ぶ最後のブルートレインに惜別乗車です。

フラッシュ撮影について

 このページに掲載した写真の一部は撮影時にフラッシュを使用しています。当時は係員や走行中の列車に向けて発光しないという不文律を多くの鉄道ファンが心得ており、駅でのフラッシュ撮影は係員が特に危険と判断しない限り黙認されていました。
 現在は駅で撮影する人が増えたためか、この写真を撮影した東京駅を含め多くの駅でフラッシュ撮影が禁止されています。その点ご承知おきください。

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