2011年5月23日
あの人の眼鏡
職場でちょっと気になる事があったので非番の夜に行ってみました。
その夜は私と仲の良い人が、珍しく眼鏡を掛けて仕事をしていました。
家で眼鏡を掛ける事があるのは本人から聞いて知っていましたが、
実際に掛けたところを見るのは初めてでした。
細い横長の、黒くて角張ったデザインで、
フレームの裏側は赤く塗られています。
その眼鏡を掛け、少し背を丸めて事務所の床をコロコロで掃除する姿に、
私はレレレのおじさんに匹敵する程の面白さを感じてしまいました。
失礼とは思いましたが、この感情は封印できません。
「その眼鏡でコロコロを持っていると
漫画のキャラクターみたいで面白いんだけど‥‥」
と言ってみたところ、
「眼鏡を掛けていると何かのキャラクターみたいだってよく言われるんですよ」
と、苦笑しながらも特に怒った様子もなく答えてくれました。
真横よりやや前方から見ると、眼鏡の奥にある目が太いつるに隠れ、
よりフレームの印象が強烈になります。
正面から見ると、目がはっきり見えるせいか、
はたまたレンズの縁が細くて眼鏡の印象が薄くなるせいか、
いつも通りの印象です。
見る角度によって感じが変わるのが面白くて、私はその人の顔をずっと見続け、
しまいには写真を撮らせろと携帯電話を取り出す始末。
それでも嫌な顔もせず、私の言う方に顔を向けて1枚撮らせてくれました。
その後、廊下の掃除をしながら雑談をしました。
「掃除するならスーツじゃなくて短パンにビーサンで仕事したいですよ」
「上はブラウスにジャケットなら、私背が低いから
フロントのカウンター越しに下半身見えないと思うんですよね」
「夜中は暇なんで完全に掃除のおばさんですよ」
などと、眼鏡だけでなく言う事も色々面白いので、
こっちもつい「掃除のおばさんは頭に三角巾だよね」などと言ってしまいます。
すると向こうも
「上がスーツで下は短パンにビーサン、しかも頭に三角巾じゃ完全に変質者ですね」
と応じてくれました。
事務所に戻ってからも私の「観察」は続きました。
そして「ごめん、あの後もずっと見ていた」とだめ押ししてから別れました。
後で考えるとさすがに度が過ぎたと思い、次に会った時に謝っておきました。
「この間はごめんね」
「何がですか」
「眼鏡の事面白いとか言っちゃって」
「あ、いいですよ別に」
先方は全く気にしていないようでした。
しかしそれでも、私の携帯電話の待ち受け画面が
眼鏡を掛けたその人の写真になっている事は告白できませんでした。
2011年5月23日 11:25 | カテゴリー:よしなしごと