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2009年1月12日

社長K氏の思惑

K氏は中小企業の経営者です。
誰もが知っている大企業H社の下請けをしています。
従業員は180人程ですが、
K氏はほぼ全員の顔と名前、性格を把握しています。

ある時K氏は、事業拡張と欠員補充のためアルバイトを募集しました。
採用した人たちにはまず3箇月程で終わる仕事を与えて様子を見ました。
多くの人はその後もK氏の会社に残り、やがて1年が経過しました。
アルバイトと言っても、8時間勤務で休日は年間120日余り。
これ以上アルバイト契約のままで雇い続けることはできません。

しかし、アルバイトの人たちを社員にしてしまうと、
例え契約社員でも、年金や保険など様々な出費が新たに必要です。
かと言って、長期間フルタイムで働き続ける人をパートにはできません。

そこでK氏は一策を講じ、アルバイトの人たちを名目上個人事業主にしました。
こうすれば、給与と交通費と健康診断だけで済みます。
賞与も必要ありません。
給与も「作業料」という名目で、振込手数料を「事業主」に負担させました。

そうやってアルバイトから個人事業主になった人たちの中に、
X君という男性がいました。
K氏とはちょうど親子くらいの年齢差がありました。
個人事業主になって1年、まだ当分K氏の会社で働き続けてくれそうなX君を、
K氏は別の部署へ異動させました。
今度の仕事は今までより複雑で、たまには深夜までの残業もありました。

それから1年近くが過ぎ、X君が突然退職したいと言ってきました。
理由を聞くと、このままK氏の会社に長くいても希望が持てないから
他の会社で働きたいと言います。
しかも、既に転職先は決まっていて、
先方の社長がX君の退職を待っているとまで言います。
さらに聞くと、もう随分前から、
休日にはその転職先の仕事をしていたのだとか。

X君は勤め先に無断で就職活動と副業をして、
転職の準備を勝手に進めてしまってから、突然退職したいと言い出しました。
こんなやり方は感心できません。

しかし、K氏は被害者でしょうか。
X君は個人事業主ですから、K氏の会社の社員ではありません。
就業時間外に何をしようと、いちいちK氏の許可を取る必要はありません。
長く使うつもりの従業員なのに、
経費をケチるために名前だけ個人事業主にした結果、
それを逆手に取られたのですからお互い様、どっちもどっちです。

X君の契約書は、契約期間が空欄になっていました。
X君がそれについて質問すると、契約期間は特に定めないが
基本的には毎年4月の年度初めに更改すると回答していました。
何かあったらいつでも解雇できるようにしてあったのでしょうか。
その結果、2月一杯という面倒なタイミングでX君の退職を認めることになり、
春の人事異動に先駆けて大急ぎでX君の代わりを探さねばなりませんでした。

今は、仕事に就けなくて困っている人がたくさんいます。
しかし若い世代に目を向けてみると、少子化で私学が経営難に陥っています。
近い将来、企業の人事にもその影響が及ぶことは必至です。
自社の社員ではないからと派遣労働者の使い捨てなどしていると、
仕事が、そして企業が労働者に使い捨てられる時代が
いつか来るかも知れません。

2009年1月12日 23:25 | カテゴリー:よしなしごと