2006年2月 4日
新しい玩具(おもちゃ)
今日機械が人間をそこなうようにぼくらに思えるのは、もしかすると
かくまで急速な変化のあとを批判するに必要な時間の距離が
まだ足りないためかもしれない。
これは、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著 堀口大學訳
「人間の土地」にある一文です。
技術の急速な進歩、世の中の急激な変化に、
人々の考えや生活はまだ追い付いていません。
先端技術の結晶たる最新鋭の機械を手にした我々は、彼に言わせれば
「新しい玩具(おもちゃ)がおもしろくてたまらない野蛮人の子供たち」です。
郵便飛行機の操縦士だったサン=テグジュペリは、
彼が生きた時代の「新しい玩具」の1つである飛行機についても、
「ぼくらの飛行機競争もこれ以外の意味を持ちはしない」
「競争の方が、さしあたり、競争の目的より重要視されている」
と語っています。
21世紀初頭を生きる我々の「新しい玩具」の代表格は、
携帯電話とインターネットでしょうか。
次々と増えて行く携帯電話の機能は目的不明で、
どんどん通信速度を増すインターネット回線はオーバースペックのように
私には感じられます。
今は、その競争がおもしろくてたまらない時代です。
最新の技術に価値を感じつつも、何か説明できない鬱陶しさを感じる理由が、
何となくわかった気がしました。
私は、携帯電話もインターネットも、「生活の道具」だと思っています。
筆箱の中の筆記用具が、台所の調理器具が、
一斉にその機能の高さを自慢し始めたら、
まとめてゴミ箱に放り込みたくなるじゃないですか。
サン=テグジュペリは1939年にこの本を書いています。
今は飛行機もすっかり「生活の道具」になりました。
まだまだ「新しい玩具」は出てくるでしょう。
なるべく翻弄されずに、早く使いこなしたいものです。
2006年2月 4日 23:21 | カテゴリー:よしなしごと