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2006年2月25日

軍艦とポマード

急に昔の軍艦プラモの事を思い出しました。
最近はどうなのかわかりませんが、昔の艦船プラモには、
モーターを取り付けて実際に走らせる事ができる物も多かったようです。
(こうする事をモーターライズと言います)

私が小学生の頃だったと思うので、1980年前後でしょうか。
自分で買ったか、友達が持っていたのか、
どこのメーカーのどの船のキットかも忘れてしまいましたが、
プロペラ軸の部分からの浸水を防ぐためにポマードを詰めるよう
説明書に指示があったのを覚えています。
ポマードのようなドロドロした物でそれができるというのが
実に不思議に思えましたが、私は実際に試せませんでした。
我が家にはポマードが無かったのです。

最近船に興味を持つようになり、港に船を見に行ったりすると、
船についていろいろな事が知りたくなります。
全長241m、総トン数50142tの飛鳥IIには一体どれだけのポマードが‥‥
いやいや、いくら何でもそれはないでしょう。

では、どうやって浸水を防いでいるのでしょう?
自動車や鉄道の場合、こういう事を解説している本がたくさんあるのですが、
船は少ないです。と言うか、書店に並ぶ船の本は、
ボート免許と軍艦の本ばかりです。
どうも商船は、まだ趣味の一分野としては未熟のようですね。
そう言えば、軍艦のプラモはたくさんありますが、
商船はタイタニックなどの超有名船以外ほとんどありません。
(氷川丸など軍に徴用された船の平時仕様が若干ありますが)

ここで皆さんに質問です。
船は右側通行、左側通行のどちらか知っていますか?
赤いランプは船体のどちら側を示すか知っていますか?
大型船の燃料は主に何を使っているか知っていますか?

自動車なら免許を持っていない人でも知っているでしょう。
「道路は誰でも歩くが海上を歩く人はいない」
なんて言われてしまえばそれまでですけど、
日本は周りを海に囲まれ、造船技術も高いのですから、
何だか淋しい気がします。
(ちなみに正解は右側通行、左側を示す、重油です)

豪華客船と言われる飛鳥にも手頃な値段の国内クルーズがあり、
水上バスやレストラン船など、気軽に楽しめる船は結構あるものです。
近年、バスや旅客機の趣味雑誌も発行されていますから、
もう少し時間がたてば、船も趣味の一分野として認識されるでしょうか。
その時私は「船オタク」の先駆者に‥‥ならなくてもいいか。

と、プラモの説明書のポマードからそんな事を考えつつ、
明日横浜で行われる飛鳥IIの命名式を楽しみに待っています。

ところで、船底のプロペラ軸からの浸水を防ぐ方法ですが、
銀河IIに乗っていた学生さんが教えてくれました。
(この人については銀河IIの邂逅を参照してください)
やはり、パッキンやオイルシールで浸水を防ぐのだそうです。
リグナムバイタというおもしろい木の事も聞きましたが、
それについてはまたの機会に。

23:05 | カテゴリー:のりもの

2006年2月18日

銀河IIの邂逅

見慣れないアドレスから電子メールが届きました。
私のサイトの記事「練習船銀河II一般公開」を見てくださったそうです。
しかもその方は、私が名古屋で銀河IIを見学した時に
実習生として乗っていたのだそうです。
航海中に撮った写真を送っていただいたので、
私の銀河IIのページに掲載させていただきました。

初めは、もともとあった銀河IIのページの最後にその写真を載せて、
簡単な説明文を書くつもりでした。
ところが、その学生さんから頂いたメールの内容を思い出すと、
もっと色々書きたくなり、結局新たに1ページ作ってしまいました
私信ですから内容の紹介は差し控えますが、
船員の仕事があまり理解されていないという言葉には大きく頷きました。
私自身が理解していませんからね。

我々は普段、石油がどうやって運ばれてくるかなどに
思いを巡らせることはほとんどありません。
NHKのプロジェクトXで、巨大タンカー「出光丸」の事を知っても、
数日後には忘れてしまいます。
海賊なんてフック船長ぐらいしか知りません。
一通りの「知識」はあっても、「理解」はしていないと言えそうです。
戦時中、「ガソリンの1滴は血の1滴」などと言われたそうですが、
実は今だってそうなのです。

まあ、海運関係者でもない上に道楽でバイクに乗っている私ですから、
今更そんなことを言っても説得力は無いのですが、
学生さんの熱意に動かされたとでも言いましょうか。

私のサイトの記事は、全て私が実際に見聞きした事です。
こうして改めて船について考える機会を得られたのも、
実際に練習船を見に行ったからでしょう。
そうして書いた記事を発表し、
その記事を読んでくれた訪問者から良い影響を受ければ、
個人サイトを公開する甲斐もあるということです。

コンピューターネットワークは、通信手段に過ぎません。
大事なものはネット上にはありません。
通信回線の向こうにいる誰かが持っています。

23:54 | カテゴリー:のりもの

2006年2月11日

箱庭の飛鳥

豪華客船「飛鳥」を運航する郵船クルーズのサイトから
飛鳥のスクリーンセーバーをダウンロードできます。
世界地図の昼の部分は明るく、夜の部分は暗く表示され、
航海中の飛鳥の位置までわかってしまう
ユニークな世界時計のスクリーンセーバーです。

私が使っているのは液晶モニターなので、
本来スクリーンセーバーは要らないそうですが、
おもしろいのでインストールして時々ながめています。

今年のお正月、出航を目前に控えた飛鳥を横浜港で眺める機会がありました。
出航後、スクリーンセーバーを見て、
今日はシンガポールだ、インドネシアだと居場所を知るのが
なぜか日々の楽しみでした。

この感覚は何でしょう。

列車の模型は、ただ置いてあっても鉄道好きの人が注目するだけですが、
ひとたび線路の上を走ると、子供も大人も、鉄道ファンでない人も、
その走りについ見入ってしまいます。

飛鳥のスクリーンセーバーは、交通博物館の鉄道模型さながらに、
世界地図の中を飛鳥が移動します。
飛鳥そのものが見えるわけでもないのに、毎日見てしまいます。

飛鳥は南方の海を北へ向けて進み、日本に近付きます。
そして今朝、遅めに起きてスクリーンセーバーを見たら、
画面の真ん中にこう書いてありました。

2006年2月11日、客船「飛鳥」は全てのクルーズ航程を終了いたしました。
長らくご愛顧いただき、まことにありがとうございました。

飛鳥の居場所を知らせる印は、世界時計の東京の所にあります。
帰って来ました。これで終わりです。
私にとってはこれといった縁もない船ですが、何だか感慨深いのが不思議です。

1ヶ月に渡るクルーズで、乗っていない私までも楽しませた飛鳥は
きっと素晴らしい船です。
乗らない船で1ヶ月楽しめた私は安上がりな船好きです。
2週間後には「飛鳥II」の命名式があります。
1ヶ月後には、飛鳥がドイツの客船「アマデア」に生まれ変わって横浜に来ます。
まだまだ楽しめる「飛鳥」です。

11:45 | カテゴリー:のりもの

2006年2月 4日

新しい玩具(おもちゃ)

今日機械が人間をそこなうようにぼくらに思えるのは、もしかすると
かくまで急速な変化のあとを批判するに必要な時間の距離が
まだ足りないためかもしれない。

これは、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著 堀口大學訳
「人間の土地」にある一文です。

技術の急速な進歩、世の中の急激な変化に、
人々の考えや生活はまだ追い付いていません。
先端技術の結晶たる最新鋭の機械を手にした我々は、彼に言わせれば
「新しい玩具(おもちゃ)がおもしろくてたまらない野蛮人の子供たち」です。

郵便飛行機の操縦士だったサン=テグジュペリは、
彼が生きた時代の「新しい玩具」の1つである飛行機についても、
「ぼくらの飛行機競争もこれ以外の意味を持ちはしない」
「競争の方が、さしあたり、競争の目的より重要視されている」
と語っています。
21世紀初頭を生きる我々の「新しい玩具」の代表格は、
携帯電話とインターネットでしょうか。

次々と増えて行く携帯電話の機能は目的不明で、
どんどん通信速度を増すインターネット回線はオーバースペックのように
私には感じられます。
今は、その競争がおもしろくてたまらない時代です。

最新の技術に価値を感じつつも、何か説明できない鬱陶しさを感じる理由が、
何となくわかった気がしました。
私は、携帯電話もインターネットも、「生活の道具」だと思っています。
筆箱の中の筆記用具が、台所の調理器具が、
一斉にその機能の高さを自慢し始めたら、
まとめてゴミ箱に放り込みたくなるじゃないですか。

サン=テグジュペリは1939年にこの本を書いています。
今は飛行機もすっかり「生活の道具」になりました。
まだまだ「新しい玩具」は出てくるでしょう。
なるべく翻弄されずに、早く使いこなしたいものです。

23:21 | カテゴリー:よしなしごと